スクリーンとクローゼットのあいだで
〈Moloch〉小島真澄の考え方。
Text:Maruro Yamashita Photo:Yumi Saito
映画は上映が終われば消えてしまうけど、その体験は身体のどこかに残り続けます。名古屋を拠点に活動する〈Moloch〉のディレクターである小島真澄さんは、映画の余韻を服として日常に持ち込んでいます。
ビート文学に由来するブランド名、SFやホラーへの偏愛、古着から抽出されたディテール、そして地元の映画館「伏見ミリオン座」で開催される映画Tシャツイベントの開催。ファッションと映画という異なる文化を行き来しながら、スクリーンの外から映画への入り口を作り続けている小島さんに、名古屋の「Long Set Clothing Store」にて話を聞きました。
― まずは<Moloch(モーラック)>というブランドの始まりについて教えてください。
7年くらい前に自分ともう一人の、二人で始めたんですよ。最初は古着を仕入れて売る二人組みたいな感じだったんですけど、僕が服を作る仕事をしていたので、オリジナルの服も作ってみよう! というところからスタートしました。
― 最初は古着の取り扱いだったんですね。どんなジャンルの古着を?
二人ともカルチャーを感じる洋服が好きだったので、アメリカっぽい匂いのするものですね。サンフランシスコのビートニクとかビート文学が好きで。そういうものを集めて売るっていうのが始まりでした。ブランド名の<Moloch>も、アレン・ギンズバーグの詩集から影響を受けていますし、ロゴもある有名な本屋さんのものをモチーフにしているんです。

― 自分が<Moloch>を知ったきっかけが、プレデターのマスクをプリントしたアイテムだったので、勝手に映画を軸にしたブランドという認識でした(笑)。
そういう訳でもないんです(笑)。やはり古着をメインでやっていきたいということで、一緒にやっていた友人が抜けるというタイミングで、僕一人になったので、より自分の趣味嗜好が強くなったということはあるかもしれません。




映画をネタにしたアイテムだったり、ホラーとかオカルトっぽい世界観を意識した服作りが増えていきました。それが5年前くらいですね。
― なるほど。元々されていたという、洋服を作る仕事っていうのは、いわゆるOEM(注:アパレルブランドの企画・生産を担う仕事)ですか?
そうです。専門学校ではなく大学に進学したんですけど、そこが服飾科のある学校で。そこを出て、元々革の服を作る会社に就職して。その会社がどんどん布帛のものも作るようになって、洋服全般を作るようになったんですよね。で、6年前くらいに独立して、こういう自由な動き方ができるようになって。

― 小島さんは地元も名古屋なんですか?
そうです。ずっと名古屋ですね。
― H・R・ギーガーだったり、映画だったりを好きになった切っ掛けって覚えてますか?
親がそういう映画が好きだったので、その影響かもしれないです。よく映画館に連れて行ってもらってました。それで、自分も映画館に行くのがすごい好きになったんですよね。その頃に、ワクワクしていた体験が一番大きいです。
― 『プレデター』とかは子どもには少し刺激が強いですよね(笑)。
そうですね。あの皮を剥いでるシーンとか(笑)。幼い頃から、そういうものにワクワクしちゃってたのもあったと思います。



― 定期的に映画館でイベントをされているんですよね? それは<Moloch>として?
そうです。curated byとか、presentsみたいな感じでやらせてもらっていて。名古屋の「伏見ミリオン座」さんていう映画館なんですけど。

ミニシアターよりはちょっと大きくて、この辺りで映画好きの人たちは結構行く映画館なんです。新作もしっかり上映しているし、ミニシアター系の新作もやっていて。そこで、映画関係の古着のTシャツを売るイベントをやっていて。

― 最高のイベントですね!
「伏見ミリオン座」の支配人が実は大学の先輩だったんですよ。それで知人に紹介してもらって、一度呑みに行かせてもらって。そうしたら、映画館でもいろんなコンテンツを探しているから、何かイベントができれば良いねっていう話になって。それで、僕が元々集めていた映画Teeを販売するというイベントをやることになったんです。そもそもは全く手放す気はなかったんですが、映画館でやれるなら… ということで。本当に欲しいと思ってくれる人の手に届けば良いなと思ってます(笑)。
小島さんの映画Teeコレクションの一部
― 今もそういった映画Teeだったり書籍だったりは今も蒐集されてるんですか?
そうですね。見つけると買ってしまいますね。周りには余りコレクター仲間みたいな存在もいないんですけど。ここにある本は、このビルにあった「BLACKBOOTS」というお店の店主、岩前さんから譲ってもらったものも多くて。昔からお世話になってて、岩前さんからの影響は強いかもしれないです。
あと、映画以外にも、カードゲームの<Magic: The Gathering>も世界観というか、あの雰囲気が好きで。

中学生くらいの頃、めちゃくちゃやってて。今はカードは手放しちゃってるんですけど、Teeは集めてます。デザインもとても格好良いですよね。
― プリントもの以外の洋服に関しても映画などのネタ元があるんですか?
映画からモチーフをっていうのは、こういう服に関しては無いんですよね。

むしろこの辺りのは、古着からだいぶディテールを取り入れてます。右から二番目の、「Long Set Clothing Store」と一緒に出したジャケットは、いわゆる”ゴンズジャケット”って呼ばれる、<Supreme>が出していた元々<SPIEWACK>というところが作っていて。<Supreme>の“ゴンズジャケット”ではないけど、<SPIEWACK>の作った中綿入りの“WEP JACKET”を持っていて。そこに“ダービージャケット”のディテールを取り入れてるんですよね。
― “ダービージャケット”のディテールをっていうのは、やはりサンフランシスコのカルチャーがお好きというのと繋がってくるんですか?
そうですね。でも、単純に見た目も好きで。初めて見たときから、格好良いな〜と思っていて(笑)。

― いまでもサンフランシスコのカルチャーだったり、ビート文学の影響下にあるような映画などをチェックされていますか?
そうですね。やはり、ビート系の何かしらがやっているとなると気になりますね。もっとしっかりチェックできればなと思ってるんですけど。
― では、映画全般となるとどうですか?
わりとチェックしている方だと思います。ジャンルでいうと、SFやホラーが好きで。一般的につまらないと言われている映画でも、僕は結構いいなって思って観れちゃうんですよね。
― いわゆるB級映画的な楽しみ方もありますからね。
どこかしらにちょっと面白いポイントがあるんですよ。

― ちなみに、「伏見ミリオン座」でのイベントはどれくらいの頻度で開催されてるんですか?
あれは年に一度のペースですね。それくらいじゃないとなかなか物も用意できないので。
― とてもスペシャルなイベントなんですね! 来られるお客さんたちもやはり映画好きな方ばかりなんですか?
そうですね。「伏見ミリオン座」にたまたま来てたお客さんとかも、なんかやってるなって感じで見に来てくれたり。物が映画ネタのものなので、見るだけでも楽しんでくれていたり。もちろん、ファッション好きな方も来てくれて、とても良い感じでした。
― <Moloch>としてPop Upを行ったり、イベントに出展する際に大切にしていることってありますか?
大切にしていること… やってることとか、作っているものは、結構レンジが狭いと思うので、やっぱり自分がそのPop Upの場にいるときは、なるべくこういうネタがあって作っているんだよっていうのをなるべく説明して。
― 伝えていきたいという感じですね。
はい。特に映画ネタのTシャツは、別に買わなくても、とにかく面白いんで観てくださいみたいな、そういう感じで接客してしまうことが多いんですけど。映画って白いよっていうのを伝えていきたいですね。








